所蔵作品検索作家名一覧
作家名索引
ルカス・クラーナハ(父) / Lucas Cranach the Elder [ クローナハ , 1472年 - ワイマール, 1553年 ]
- ≫ 作家について
-
宗教改革運動と農民戦争が端的に示しているように、16世紀前半のドイツは宗教的にも、社会的にも不安と激動の様相を呈していた。画家たちもまたこうした状況を敏感に反映し、作為的ともいえる大胆な構図と強烈な色彩をもつ表現主義的性格の強い作品を生みだした。ルターとの親交で知られるクラーナハもまた、このような時代を生きた画家であり、特に、ウィーンで制作された初期作品においては、アルトドルファーに代表されるドナウ派の諸作品とも共通する、自然と人物との深い内面的交流が厳しい筆致のうちに捉えられている。しかし、1504年頃、フリードリッヒ賢侯によってヴィッテンベルクに招聘され、ザクセン侯国の宮廷画家になると、クラーナハの芸術は大きな変質を遂げた。ウィーン時代の緊張感に満ちた作風に対して、工芸的ともいえる洗練された装飾性が目立つようになるのである。繰り返し描かれたヴィーナスなどのコケティッシュな裸体像は、この時期の画家の一面を端的に示すものといえよう。その一方でクラーナハは、ルター派の推進者として多くの布教版画を制作し、プロテスタントの新しい図像をも生み出している。
(出典:国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006., p.160)
ドイツのクローナハに生まれた画家、版画家。修業時代については明らかでないが、1501年頃にウィーンに現れ、独創的な様式で肖像画や宗教画を描いた。1505年頃にザクセン選帝侯フリードリヒ3世に招かれ、ヴィッテンベルクの宮廷画家となるが、そこで作風を大きく変化させ、画一的で装飾性の強い表現を特徴とする作品を多く制作するようになった。1508年か09年に訪れたフランドルでイタリア・ルネサンス美術に触れたことは、クラーナハの画歴においてきわめて重要な出来事である。それ以降、彼は独特のプロポーションをもつ官能的な裸婦像や神話主題の作品を描き、さらなる名声を得るに至った。クラーナハが「速筆の画家」と称賛され、絵画、版画ともに膨大な数にのぼる作品を制作したのは、大規模な工房を構え、大勢の助手や弟子を抱えていたからであろう。銅版画は制作に時間がかかるためか、生涯を通じて木版画を好んだ。また宗教改革の波のなかで、マルティン・ルターとも深く関わり、彼の肖像画のほか、多くの聖書挿絵を制作し、ルターのイメージを伝達する版画家として活躍した。
(出典:国立西洋美術館平成14-18年度新収蔵版画作品展, 2007., )
13件のうち 1~13件めを表示