更新日 2023.02.20 | 20 February 2023
現在は展示していません
現在は展示していません。
Herman van Swanevelt
c. 1600 - 1655
ヴィーナスとローマの神殿およびコンスタンティヌス凱旋門の見えるローマの景観 A Roman View of the Ruins of the Temple of Venus and Rome with the Colosseum and the Arch of Constantine
制作年 | 1634年 |
---|---|
材質・技法・形状 | 油彩、カンヴァス |
寸法(cm) | 52 x 67 |
署名・年記 | 右下、岩の上に署名、年記: Herman Swanevelt / fecit Roma 1634 |
分類 | 絵画 |
所蔵番号 | P.1993-0004 |
ヘルマン・ファン・スワーネフェルトはいわゆる「親イタリア派」に属すオランダの風景画家のひとりである。けれども、この画派の多くの画家が数年のイタリア滞在の後故国オランダに戻って活動したのにたいし、スワーネフェルトは1629年から41年までのイタリア滞在の後、44年から歿する55年まで10年以上にもわたってパリで過ごし、「フランス国王付きの画家」に任じられた。こうした国際性が逆の意味で彼の作品に非個性的な負の性格を与えたのだろうか、歿後はクロード・ロランとヤン・ボトの名声の陰に隠れ、急速に忘れ去られていった。現在も不明の部分が多い画家ではあるが、1620年代にはクロード・ロランと生活を共にして絵画の研鑽に励んでいたという記録もあり、クロードの初期作品に大きな影響を与えたばかりか、いわゆる理想風景の系譜を語るうえでも欠くことのできない画家のひとりとして再評価の対象となっている。恐らくユトレヒトのアブラハム・ブルーマールトのもとで絵画を学んだスワーネフェルトは、1629年以前にはローマに到着したものと考えられる。スペイン王フィリーペ4世の別荘ブエン・レティーロ宮のための風景画装飾は17世紀の風景画の展開を考えるうえできわめて重要な作品群であるが、スワーネフェルトはヤン・ボト、クロード・ロラン、ニコラ・プッサン、ガスパール・デュゲなどとともにこの別荘のための絵画制作に参加している(スワーネフェルトの作品を含むブエン・レティーロ関連の作品はプラド美術館に所蔵されている)。1642年にはオランダにいたことが確認されるが、44年からはパリに居を定めた。パリにおける主たる活動としてはランベール館の装飾が指摘される。この館の風景画装飾はフランスをはじめ、オランダ、イタリアなどからの多くの画家の協力で完成されたが、スワーネフェルトはアセレインやパテル、ル・シュウールなどと共に参加し風景画を制作している(スワーネフェルトの作品を含むランベール館関連の作品はルーヴル美術館に所蔵されている)。 本作品はある意味ではもっともスワーネフェルトが画家として成熟を見せた1630年代に制作されたもので、ヴィーナスとローマの神殿、コンスタンティヌス凱旋門、あるいは、コロッセウムなどの古代遺跡が見えるローマの光景が描き出されている。スワーネフェルトの作品として今日知られる多くの風景画は大きな樹木や森を重要なモティーフとしているが、ケンブリッジのフィッツウィリアム美術館には《カンポ・ヴァッチーノ》(1631年)が、また、ダリッチ絵画館には《コンスタンティヌス凱旋門》(1645年)が所蔵され、この画家が現実の景観をモティーフとする風景画をも少なからず制作した可能性が示唆されている。しかし、俯瞰的構図をもち、地誌的あるいは考古学的関心をもってフォーロ・ロマーノ(カンポ・ヴァッチーノ)の古代遺跡を描いたように見えるフィッツウィリアム作品とも、多くの人物が登場し、むしろ風俗画的要素を強調しているダリッチ作品とも、本作品は異なる印象を与えるであろう。現実の景観に基づいているとはいえ、ここでは詩的雰囲気が強調され、むしろ暖かい陽光に照らし出された牧歌的な光景の描出が意図されているように思われる。こうした意味において、本作品はクロード・ロランの《ローマの景観》(1632年/ロンドン、ナショナル・ギャラリー)に比較しうるものであり、クロードの初期作品の問題を考察するうえでも興味深い資料を提供するものといえよう。(出典: 平成5年度新収作品 [配布資料]. [東京]: 国立西洋美術館, 1994.7.)
来歴
Charles Buttler, London; Auc. Christie's, London, 9 Dec. 1988, no. 63; Colnaghi, London; Purchased by the NMWA, 1994.
展覧会歴
- 1883
- Works by the Old Masters, Royal Academy, London, 1883年0月0日-1883年0月0日, no. 285
- 1998
- イタリアの光─クロード・ロランと理想風景, 国立西洋美術館, 1998年9月15日-1998年12月6日, cat. no. 107
- 2018
- [版画素描展示]ローマの景観:そのイメージとメディアの変遷, 国立西洋美術館 版画素描展示室, 2018年10月16日-2019年1月20日, cat. no. 1
- 2019
- 古代への情熱:18世紀イタリア・考古学と芸術の出会い, 静岡県立美術館, 2019年10月2日-2019年11月17日, cat. no. 1
文献歴
- 1996
- 国立西洋美術館年報. Nos. 27-28 (April 1992-March 1994), 1996, 幸福 輝. 新収作品. pp. 25-27, 新収作品一覧. p.73, col. repr.
- 2018
- 幸福輝. 国立西洋美術館オランダ絵画・フランドル絵画カタログ. [東京], 国立西洋美術館; 西洋美術振興財団, 2018, pp. 66-68, no. 16, col. repr.
- 2019
- 古代への情熱:18世紀イタリア・考古学と芸術の出会い(exh. cat.). 静岡, 静岡県立美術館, c2019, cat. no. 1, col. repr.
Currently not on display
A Roman View of the Ruins of the Temple of Venus and Rome with the Colosseum and the Arch of Constantine
Date | 1634 |
---|---|
Materials and Techniques | oil on canvas |
Size(cm) | 52 x 67 |
Inscriptions | Signed and dated lower right on the rock: Herman Swanevelt / fecit Roma 1634 |
Credit Line | Purchased |
Category | Paintings |
Collection Number | P.1993-0004 |
Provenance
Charles Buttler, London; Auc. Christie's, London, 9 Dec. 1988, no. 63; Colnaghi, London; Purchased by the NMWA, 1994.
Exhibition History
- 1883
- Works by the Old Masters, Royal Academy, London, 0 1883 - 0 1883, no. 285
- 1998
- Claude Lorrain and the Ideal Landscape, The National Museum of Western Art, Tokyo, 15 September 1998 - 6 December 1998, cat. no. 107
- 2018
- [Prints and Drawings Exhibition] Views of Rome: Transition in Images and Media, The National Museum of Western Art, Tokyo, Prints and Drawings Gallery, 16 October 2018 - 20 January 2019, cat. no. 1
- 2019
- A Passion for Antiquity: Archeology and Art in the Eighteenth Century Italy, Shizuoka Prefectural Museum of Art, 2 October 2019 - 17 November 2019, cat. no. 1
Bibliography
- 1996
- Annual bulletin of the National Museum of Western Art. Nos. 27-28 (April 1992-March 1994), 1996, Kofuku, Akira. New Acquisitions. pp. 25-27, List of New Acquisitions. p. 73, col. repr.
- 2018
- Kofuku, Akira. Catalogue of Dutch and Flemish Paintings, The National Museum of Western Art, Tokyo. [Tokyo], The National Museum of Western Art, Tokyo; The Western Art Foundation, 2018, pp. 66-68, no. 16, col. repr.
- 2019
- A Passion for Antiquity: Archeology and Art in the Eighteenth Century Italy(exh. cat.). Shizuoka, Shizuoka Prefectural Museum of Art, c2019, cat. no. 1, col. repr.