最初の１枚はキリストを抱くマリアを描く（《三日月の上に立つ聖母子》G.2000-0041）。「太陽を着て、足の下に月を踏み、その頭に星の冠を被っていた」黙示録の女を想起させる姿は、彼女が原罪の汚れなくキリストを胎に宿したことを表す。続く2点はアダムとエヴァの堕罪を物語る。蛇にそそのかされて禁断の果実を口にしたエヴァは、アダムにもそれを食べるよう勧めた（《堕罪》G.2000-0002）。神の怒りにふれたふたりは、天使に追い立てられ、楽園より追放される（《楽園追放》G.2000-0003）。この人類最初の罪＝原罪は、アダムとエヴァの子孫である全ての人間によって負われ、キリストの犠牲によってあがなわれることとなった。以下この救済の物語が紡がれていくが、その冒頭場面のエピソードは、キリストの母マリアの誕生以前にさかのぼるもの。マリアの両親には結婚後長らく子供ができなかったが、あるとき神殿を訪れた父ヨアヒムが、そのことを祭祀になじられ、供物の受け取りを拒否されている（《祭司に犠牲を拒否されるヨアヒム》G.2000-0004）。深く悲しんだヨアヒムは、家に帰らず、しばし荒野の羊飼いたちのもとで暮らす。そこに天使が現れ、妻アンナが子を身ごもることを伝えた（《マリアの誕生をヨアヒムに告げる天使》G.2000-0005）。帰途についたヨアヒムは、エルサレムの金門でアンナと再会を果たす（《金門におけるヨアヒムとアンナの邂逅》G.2000-0006）。天使のお告げどおりアンナは妊娠し、やがてマリアが誕生する。マリアが3歳になったとき、両親は彼女を神殿に預けた（《マリアの宮詣で》G.2000-0007）。神聖な環境で教育を受け乙女へと成長したマリアのもとに、ある日天使が現れ、神の子キリストを身ごもったことを告げる（《受胎告知》G.2000-0008）。マリアの頭上で光に包まれているのは、鳩の姿をした聖霊である。(出典: クラインマイスター：16世紀前半ドイツにおける小画面の版画家たち, 2012. [展覧会作品解説パネル] より一部、文言変更し引用)