《1月と2月》（G.1999-0038）から《11月と12月》（G.1999-0043）には、それぞれ2組の踊る農民のカップルが描かれる。カップルの頭上には男性パートの人物名が記されているが、姓は各々12の月の名前、名はその月に縁日がある聖人の名前からとられている。そして、《一年の終わり》（G.1999-0044）には「12ヶ月は過ぎ去り、我々はまたすぐに[ダンス、つまり新しい1年を]開始する」という銘文のもと、新たなステップを踏み出すカップルが描かれる。右端の木陰では、楽士たちがバグパイプとショーム（木管楽器の一種）を奏でている。彼らは太陽と月で、輪舞のリズムと12の月の運行を司っているのである。農民たちのダンスは、聖人の縁日にちなむものとも読み取れるが、残り3点に描かれているのも、その祝祭での出来事であろう。《農民の宴》（G.1999-0045）では、ブドウ棚の傍らで楽しげな宴会が催されている。一方、《農民の喧嘩》（G.1999-0046）と《垣根の陰で》（G.1999-0047）には、羽目を外した農民たちの喧嘩、飲み過ぎて嘔吐する者や人目を避けて抱擁しあう恋人たちが描かれる。こうした行為は、当時、農民たちの祝祭につきものと考えられていた。(出典: クラインマイスター：16世紀前半ドイツにおける小画面の版画家たち, 2012. [展覧会作品解説パネル] より一部文言を変更し引用)